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最高裁判所第三小法廷 昭和28年(あ)3373号 判決

主文

本件上告を棄却する。

理由

弁護人野村英夫の上告趣意について。

所論は、原審が被告人の行為を医行為と判断した点を非難し、大審院判例に違反すると主張する。所論の引用する大審院の各判例に通ずる「医業」または「医行為」の観念は、原判決の控訴趣意第一点及び第二点の(一)に対する判断の前段に説示するところをもって相当するが、所論はこの点について被告人の施術方法は、単に患部につき指にて押え又は押すのみで一切投薬注射等を行わず、聴診器も例外として使用するに止まるのであるから、原判決の判断は、所論引用の判例に違反するというのである。しかし原審は破棄自判をしたのであるが、その「罪となるべき事実」の判示第一及びその(一)ないし(四)の事実と、前記控訴趣意に対する判断の中段以下にきわめて詳細に説示するところを合せ考えてみると、被告人の行為は、前示主張のような程度に止まらず、聴診、触診、指圧等の方法によるもので、医学上の知識と技能を有しない者がみだりにこれを行うときは生理上危険がある程度に達していることがうかがわれ、このような場合にはこれを医行為と認めるのを相当としなければならない。原審が被告人の行為をもって、外科手術の範囲に属する医行為であるとした説明の当否及び引用した大審院判例の適否は別として、その判断は結論において誤りはない。所論引用の各判例はいずれも本件被告人の行為とその態様又は程度を異にする事案であるから本件に適切でない。

その他記録を調べても刑訴四一一条を適用すべき事由は認められない。

よって同四〇八条により裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 島 保 裁判官 河村又介 裁判官 小林俊三 裁判官 本村善太郎)

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